Minimal Green

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Webデザインに著作権はないのか? モラルと法律の間

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blog.minimal-green.com

前回の記事ではテーマ制作者の立場からモラルと責任について書きました。ここではより一般的な視野で、Webデザインの著作権周りについて考えてみます。

デザインの著作権侵害訴訟の判例

一般的にwebデザインをパット見パクった程度では著作権性で争うことは難しいそうです。
www.ituki-yu2.net


言及されたので拝読しコメントさせていただきました。その中で

Webデザインで著作権侵害が認められるか否かですが、僕の見解としてはグレーだと思います。
こういったケースで裁判になった場合、過去の判例で大体決まるんですが、webデザインの著作権侵害の判例はありません。
類似のデザインの著作権侵害の判例で、とある商品の販促ツールデザインについての著作権侵害訴訟の中で、そのデザインについて制作者側の著作物性が否定された事例があります。

として以下の判例を教えていただきました。

直接ウェブデザインについてのものではありませんが、とある商品の販促ツールデザインについての著作権侵害訴訟の中で、そのデザインについて制作者側の著作物性が否定された事例があります。
(大阪地方裁判所判決 平成24年1月12日)
(※原告はデザイン制作者、被告はその制作を依頼した側です。)

http://copyright-topics.jp/topics/copyright_for_webdesign/

判例全文はこちら↓
www.translan.com
これはWebデザインの件ではないのですが、webデザインの訴訟の際にも参照される可能性は高そうです。

レイアウトと配色には著作権は適用されない

(2) 著作物性
ア 原告は、本件デザイン画について、これらは著作物性を有し、これを創作したのは原告の従業員であるから、原告に本件デザイン画にかかる著作権が帰属すると主張する。
 また、原告は、本件デザイン画の著作物性の根拠について、写真、背景の色や文字を、商品のイメージ、アイデア、コンセプト等に合わせて、独自の発想に基づいてデザイン、レイアウト、配色、仕上げ作業等を行って制作したことを理由として述べる。
 しかし、商品イメージやキャッチフレーズ、モデルの写真などの素材は、被告らから提供されたものであって、原告が制作過程において行った作業(製造過程における作業を除く。)は、デザイン、レイアウト(素材のレイアウト)、配色、仕上げの各作業に過ぎず、本件デザイン画に著作物性を認めることはできない。

但し、この件では原告のデザイン制作者は被告のクライアントから素材やキャッチコピー・文言などの提供を受け、かなり綿密に打ち合わせをしてクライアントのアイデア・意見を取り入れてるケースなので、
完全に素材やデザインを一から全部オリジナルで制作した場合(自社サイトの制作・有料テーマの制作など)にはそのままは当てはまらないと思います。

が確かに訴訟になったとき、クライアント案件ではレイアウトと配色の処理をしただけとみなされると、デザイナー側にとっては著作権性を主張するのは難しいとも言えます。

基本的にはwebデザインは制作した時点で、制作者に著作権は発生します。(無方式主義)しかしながら、訴訟になったときに著作権性を認められるかどうかは微妙ということです。
acthouse.net


著作者人格権

以前アメブロカスタマイズ案件でクライアントさんに依頼され提供した私のカスタマイズCSSコードを「クレジット付きで」そのまま全部流用されたことがありました。
どういうことかと言うとそのクライアントさんはご自身でもアメブロカスタマイズ制作を受注するようになり、その際に受けた仕事で私のCSSを丸々(クレジット:designed by minimalgreen)のコメント付きで流用されていたのです。
また制作実績に私の制作したヘッダー画像も自身の制作物として宣伝に使われていたので、私の方から直接抗議しました。すぐご自身の過失を認められ削除され解決したので良かったのですが、まさか普通の個人のクライアントさんからそんな仕打ちを受けるとは思わなかったのでびっくりしました。世の中には色々な人がいるものです。
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この件ではCSSの流用という著作権侵害のみならず、著作者人格権の侵害も問題でした。他人が著作権を有するものを自分の制作物として公開することは「著作者人格権の侵害」に当たります。

著作者人格権は、著作物に対して発生する著作権の一部です。著作者人格権は、名誉や功績と言った人格的な利益を保護する性質を持った権利で、子孫や他人に譲渡できない権利となっています。

http://www.iprchitekizaisan.com/chosakuken/jinkakuken.html

よくクライアントワークでは「著作権の譲渡」といった契約をすることがありますが、これはクライアントが自由に様々な用途で制作物を使用できるように、またいちいち確認するのも制作者側にとっても面倒なので双方の利便性のために取り決める契約です。注意すべきなのは、著作権は譲渡出来ても、著作者人格権は譲渡出来ないことです。著作者人格権で訴訟になった事例もあります。

著作者人格権と「ひこにゃん事件」 | ブランシェ国際知的財産事務所
外注デザイナーが包装フィルム会社を提訴、著作者人格権について | 企業法務ナビ

100%GPLのWordPress有料テーマはどうすれば利益を守られるか

100%GPLのWordPressテーマは有料であっても、テーマファイルを改変またそのまま丸ごと無料/有料で転売しても文句は言えないことになっています。

ただそんなことをする人はモラルが無いとして叩かれるに決まっているし、数としてはそんなに多くないのですが、100%GPLは商売としては難しい面もあります。

そのため多くの有料テーマではスプリットライセンスを採用し、CSSやJSを勝手に流用出来ないようにしています。WordPressの自由の理念からすると本来は100%GPLであるべきですが、制作者の利益を守るためにはスプリットライセンスにするのも致し方ないと思います。

capitalp.jp
capitalp.jp

私はブログでおすすめテーマとして紹介するものは100%GPLのテーマをなるべく紹介したいと方針を決めています。
100%GPLでも有料で利益をあげられるようになって欲しいので、どうすれば制作者の利益が守られるのか幾つか考えてみました。


100%GPLの有料テーマの利益を守るための提案
  • 公式を使うことのメリットをアピールする
  • 公式のサポートを手厚くする
  • 公式ならではのオプションを付ける
  • 自動アップデート機能などアフターケアを充実させる

商標登録で保護出来る?

テーマ名、テーマのロゴ、テーマの特徴的な部分のみのデザインをブランドデザインとして商標登録すれば、〇〇風としてパクられるのも防げますし、指定商品・指定役務で競合しそうなところをしっかり指定すればテーマのブランド・利益を守ることができるのではないでしょうか。意匠権ではウェブデザインに適用出来ないようなので商標登録で保護することが出来ると思います(間違っていたら教えてください)。
anywher.net
anywher.net

追記:WordPressテーマの海賊版と商標権の話はこちらのtogetterも参考になります。
togetter.com


ただWordPressテーマを商標登録することはGPLの理念に反するのでしょうか?この辺りはちょっとよくわかりません。テーマを自由に使えることと、利益を得ることが両立出来るようになって欲しいと思います。
(私は専業Webデザイナーではなくどちらかと言うと自由に使いたいユーザー側の立場に近いです。)

私の地元の観光協会で地域ブランドとして10年前に作った制度は商標登録してあります。これは商売上の理由というより、いい加減なものが出回ることによりブランドの質が下がることを懸念しての対策でした。

一般的なデザインは商標登録できませんが、ユーザーの不利益にならない範囲で使役役務を指定すれば制作者の利益も守る手段として良いかもしれません。
商標登録すると言っても、一般的・実用的な多くの人が使うデザインではなく、制作者の創作性のある独自のデザインにのみ適用されれば、ユーザーの利益や自由も守られるのではないでしょうか。

もちろんあまりに制作者側の権利が大きくなり過ぎることも懸念しなくてはいけません。

以上Webデザインの著作権周りについて考えてみました。制作者側もユーザー・クライアント側も双方の利益が守られるようになって欲しいと思います。